記録映画監督、浜田英夫さんの名前は覚えていなくても。「若い心の詩」といえば、古い教育映画関係者ならほとんどの人が知っているのではないでしょうか。
 1969年(昭和44年)に、それまで12年間にわたって8ミリフィルムで撮りためた盲学校の記録をもとに、視覚障害の子どもたちの成長をつづったドキュメンタリーです。当時人気の出てきた盲目のフォーク歌手、長谷川清志を柱に、視覚障害者のおかれている現実、生活環境、教育や仕事の問題、そして先生と子どもたち、子どもたちどうしの友情が育って行く過程が描かれていて、何度見ても感動します。浜田プロダクションのデビュー作品で、その年の文部賞青少年映画賞、教育映画祭最高賞、そして毎日映画コンクール教育文化映画賞などを独占しました。浜田さんはこの映画の脚本、撮影、編集を一人でやっています。趣味の8ミリ映画からプロになった浜田さんだからこそできた作品です。 
 その浜田英夫さんと私は数年前にある人の紹介で知り合いました。といっても電話、手紙、そしてふだんはメールのやりとりばかりで、実際にお会いしたのは昨年1月の一回きりでした。
 最寄りの稲城駅に車で迎えにきてくださり、自宅に着くとパソコンの前に案内され、完成したばかりのDVD作品「人間が歩み始める時」12章86分を一人で見るように言われました。 浜田さんがはじめて挑戦した単尺の映像教材資料集で、浜田さんの映像制作50年を結集した作品です。前の晩の夜更かしとストーブの暖かさで幾度か意識を失いかけながらも、一章ごとにメモを取って見終えました。12章はそれそれ別の作品とも言えますが、全体としても「若い心の詩」と同じ浜田さんの子どもたちへの暖かい眼差しが感じられる一本の作品に仕上がっています。   
 この作品を遺して、浜田さんは昨年5月、78才で逝ってしまいました。

 今年2月から浜田英夫さんの映画を見る会を、地元で浜田さんと親交のあった方々と一緒に始めました。9月30日は稲城市で、12月2日調布で浜田英夫追悼上映会を開きます。詳しくは以下のブログでごらんください。(No.73)

■浜田英夫の映画を見る会
http://hamadahideo.blogspot.com/

■浜田英夫のページ(作品録、追悼文)  
http://hamadahideo-data.blogspot.com/